桃井かおり、再発見!

ハリウッド版「幸福の黄色いハンカチ」である「イエロー・ハンカチーフ」に出演している桃井かおりを見ていて感心した。男優が渡辺謙なら女優は桃井か?堂々たるハリウッド女優としての貫禄で、単なる「幸福の〜」に出ていたからの繋がりとしてのカメオ出演で片付けられないじゃないか。

実は若い頃の桃井かおりにはそれほど惹かれなかった。74年の「青春の蹉跌」でも75年のTV「前略おふくろ様」(これは坂口良子という別路線がいたので)でも77年の「幸福の〜」でも、あの独特の台詞回しが、ちょっと好みではなかった。例外は75年のTV「傷だらけの天使」と、しばらくしての「疑惑」(82年)ぐらいかな。

でもそれは自分が「神様がくれた赤ん坊」を見逃していて、彼女の最も魅力的な作品をスルーしてきてしまった故の思い入れのなさだったことに気づかされた。それだけ「神様が〜」の桃井は魅力的だ。実は同じ年に彼女の代表作である「もう頬づえはつかない」があり、この2作で79年の映画賞を総なめにしたのだが、「もう〜」がちっとも男子的には面白さを感じることが出来ず、不思議に感じていたがこちらの作品が受賞のメインであれば大いに納得となりますねぇ。

彼女の魅力に負けず、話も面白い。同棲中の男女(桃井と渡瀬恒彦)のところへ突然『男の昔の恋人が産んだ子ども』だとして男の子がやってくる。他に父親かもしれないという男を捜す旅に3人して出る。尾道、小倉、天草、長崎、若松などのいい風景をバックにしたロードムービーヒューマンコメディだ。

父親探しが大筋かと思いきや、彼女のほうの母親探し(死んでいるのだが、その母と住んでいた場所を探す旅)でもあるという二重構造がよろしい。父親かもしれない男を捜し出すとその旅に『養育費』がせしめられ、だんだん子どもとの旅が快くなっていくあたりは『松竹』でもあるが『アメリカ映画』でもあるぞ。

そしてビックリなのは桃井がセクシーなのである。こんなに彼女ってプロポーションよかったっけ?と思うほどジーンズ姿が決まっていてビックリ。この映画見ずして桃井かおりを語るなかれ、でした。

脚本が前田陽一、南部英夫と荒井晴彦が手がけているのが気になりますね。荒井さんがこんな心温まる物語、なんてね。でも若松に着いて『ここは『花と竜』の舞台だからね』といって嵐寛寿郎吉行和子(色っぽい!!)が登場して子どもを引き取りましょうと侠客的な決着となるが、最後の桃井が『あなたと私の気持ちは同じかもしれない』(これがこの映画のキーワード)と渡瀬に迫るところで爽やかに映画は終わる。

79年、このとき桃井は28歳、もっともおんなっぷりが良いときなのだろう。ここを見逃していたと不覚である。確認させてくれたシネマヴェーラにまた感謝である。