ホラー映画は難しい

低予算で作られ、手っ取り早く稼げて資金回収が容易なホラー映画は本当に定期的に製作されている。自分で監督するものは大作ヅラする映画ばかりのマイケル・ベイも製作するのはホラー映画ばかりといっても過言じゃない。ロバート・ゼメキスもホラー専門プロダクションを持っている。

ところが、そのホラー映画が実はもっとも難しい映画じゃないかな?ロブ・ゾンビの「ハロウィンⅡ」を見てそう感じてしまうほど安易な出来なのである。彼は本業はミュージシャンでしょ。へビィ・ロックの帝王とか宣伝文句が出ていたけど、ホラー映画好きが高じて「マーダー・ライド・ショー」というかなりイケてる「悪魔のいけにえ」パターンの作品を発表した。

この「ハロウィンⅡ」は、あのジョン・カーペンターの「ハロウィン」のリメイクの続編ということになるが、ホラー映画にはかなり寛容であっても、こりゃ駄目ですね。ロブさん、なんか勘違いしてません?前作を見ていないので、出来の比較はせず、純粋に「Ⅱ」がなぜ駄目かだけ記しましょう。

まず、まったく展開に緩急がなく、ひたすらエフェクトサウンドと台詞とがうるさいだけである。これは主演女優の声の質にも問題があるが、声をひそめる恐怖がまったくないのだ。そして一見スタイリッシュに見える映像のつまらなさ。アート映画と(あたかもフェリーニを思わせる)見間違えるトーンがまったくのはき違えとしか思えん。そして殺人シーンの芸のなさ。なんぼマイケル・マイヤーズがジェイソンやフレディに比べると力技のみといっても、そりゃ、駄目でしょという殺し方しかしない。

「ハロウィン」って得体も知れないブギーマンがハロウィンの夜にやってくる、そうクリスマスの時期なると、サンタも殺人鬼にしてしまうホラー映画の一種のお約束であり、ファンタジーであるはずなのに、マイケルの観念的世界とその映像が前面に出ては、もう勘違いとしかいいようがないのである。

やはりロブさんは映画監督ではなかったのね、と確認した後に今度はロメロの「サバイバル・オブ・ザ・デッド」でお口直しといきたいところだったのに、これまた期待していたのとは大きく違った出来。

そもそもゾンビ映画はホラー映画の中でくくりきれない、独立したカテゴリーと言ってもいいぐらいホラー映画のなかの王道ジャンル(もうひとつはヴァンパイアか)だ。そこにはひたすら死者がゾンビとなり人間を襲ってくる、この格闘場面の連続で成立しているのだ。

しかし、もしゾンビに食われたのが自分の子どもだったら?親だったら?あなたはそのゾンビを抹殺できますか?という『壮大なテーマ』をロメロは持ち込んでしまった。この問題は観客はずっ〜と思っていたが触れなかった部分だったはずだ。またゾンビとの共生は可能か?の考え方の一派との対立、そして学習するゾンビと、ロメロは干拓者ゆえのテーマ主義に走ってしまったようだ。よってつまらなくはないのだが、能天気なゾンビ映画の欠片もなくなってしまったのだ。

なんか、ゾンビに対する考え方の違いで対立する一族同士ってモンタギューとキャピレットか、はたまた「大いなる西部」のバール・アイブスとチャールズ・ビックフォードの対立を思わせる。それだけでも充分に西部劇タッチで、そこにゾンビは不要となっている。

ホラー映画の監督であり続けるロメロの迷ってしまった部分とホラー映画の本職監督ではなかったロブの勘違いと、ほぼ同時に見てしまった今、本当にホラー映画は奥が深く、難しいと実感してしまうのであった。