みんな80年代が好きなんだねぇ

キネマ旬報社発行のムック本「80年代カタログ」が今週発売になり、一部の80年代がストライクゾーンの年代の男子に響いている。年齢で言うと30歳半ば以上ですな。実はその年代に響く企画こそ集客&売り上げとしてもよいのだろう。本だけでなく新作映画も80年代リメイク物が続々登場だ。

今週アメリカ封切りの「ベストキッド」と「特攻野郎Aチーム」の2本のオリジナルは、80年代に映画とTVで人気となった。共にそのリメイクとなる。

「ベストキッド」はなんでベストなんだかよく分からない邦題で、原題名は「カラテキッド」、しかし日本に来たプリントでは「モーメント・オブ・トゥルース」(真実の瞬間でいいのかな?)で、いったいどれが本当の原題名だか分かんないけど、まあ、気にすることもないか。

母子家庭で、見知らぬ土地に引っ越して来た少年が地元の男の子(カラテを習っているという設定)にいじめられ、少年はひょんなことで知り合った東洋人のオジサンにカラテを習い大会で、そのいじめた男子と闘い、勝つという話。

オリジナルはLAに引っ越して来たメキシコ系の少年と日系のオジサン(ミヤギさん!!)に対し今回のリメイクは北京に引っ越して来た黒人と地元の中国人(ジャッキー・チェン)。そうなのです「ベストキッド」は知らない土地で頑張るマイノリティへの応援映画になっているのです。

強いてあげる前作との違いは、ミヤギさんは日系の移民で故郷沖縄に対しての郷愁があるが、今回は地元のジャッキーなので、そこはなく別の悲哀を抱えているという設定(この部分のジャッキーと少年の交流はいい!)。あとは前回が鶴、今回は蛇(両方見れば分かるキーワードです)!

しかし現代の北京(オリンピック後ですね)って、この描写でいいのか、ちょっと疑問に感じる場面がややあり、やはりハリウッドが考える東洋なのかな?なんか突然のように、いじめ始めるカラテを習っている地元の少年の描写に、中国人の少年が暴力少年にしか見えないのである。これが一斉に封切ったアジア圏で大ヒットなのだが、変に感じていないのだろうか?

そして、同じ学校の女の子とのエピソードとか社会科見学のシーンとかあって、結果2時間20分、これは長いなぁ、そんな大作ヅラしなくていいんでしょ。でも前作を好きな人けっこういるので、この企画はアリでしょ(2はいらないけど)。

「Aチーム」のTVシリーズをそう熱心に見てたわけじゃないので、オリジナルとの比較は出来ないけど映画ファンが考えるイメージどおりのキャスティングと言えるでしょう。楽しめるアクション・エンタメの出来であるが、女子にはソッポむかれるでしょ。でもこれと「ハングオーバー」で益々ブラッドリー・クーパーの人気はあがるでしょう。

何がいいって80年代そのままに銃で撃っても殺すというタッチではなく、蹴散らすというタッチで血など出さないこと。シュワちゃんの「コマンドー」なんかもマシンガンごっこだったもんね。そのスタンスは実は大切で血やリアルな殺人を描かない80年代がみんな好きだったりしているわけですからね。

80年代こそ、映画の楽しみ方が本当に自由だったのだ。キネマ旬報のベスト10が批評家と読者の選出作品が相当に異なっていたことが証明している。それだけ一般の映画ファンはハリウッドの能天気映画を支持していた時代だったのだ。こうしてリメイクが多い現象は企画がないということもあるだろうが、そうした能天気映画をもう一回見たいと思っている人がいる、それだけ今が辛い時代なのかもしれないですね。