「踊る3」に期待!

フジTVでいよいよ「踊る大捜査線3」の宣伝スポットが流され始めた。公開が7月3日ということなので、いよいよ1ヶ月を切ったということがよく分かるスポットだ。本広克行監督の近い位置にいる友人から先日『おととい完成したよ』と連絡あったよ、などと聞いてしまったから、来週試写状着くかなぁと期待はいやでも膨らんでしまう。

思い返せば13年前のTVシリーズ放送開始から見事にはまって毎週TVの前に釘付けだったが、まさか映画になって3本も作ってしまうとは思いもよらなかった。

そもそも何故このTV版「踊る」に惹かれたかというえば、それは製作コンセプトどおりの『刑事と言えどサラリーマン、その日常を描く』に反応してしまったのですね。そのコンセプトを大げさに褒め称えれば、あたかも黒澤明監督が「七人の侍」を作り始めようとした時の最初に『武士の本当の一日の生活を描いてみよう』というのと同じなのではないか?

それまで刑事のイメージはと言えば、「天国と地獄」の後半の捜査陣のような、また「砂の器」の丹波さんと森田健作のようなコンビのような、そしてTV「太陽にほえろ」のカッコいいイメージが優先するのがほとんど。しかし結局は国家公務員という名のサラリーマン、そこが新しかった。

またその場所は13年前では東京都内では海寄りの僻地、お台場というところがユニークだった。いまでこそお台場はその後のフジTVの企業努力で一大アミューズメントタウンとなったが、その頃はまだTV版のエンドクレジットが象徴する何もなく寒々しい風景の土地だった。いかに湾岸署が本庁という本流からは遠い存在だったかが分かる設定だったのだ。

また、警視庁、警察庁、所轄などの(「相棒」などでも普通に描かれる)国家権力の組織構造をはじめて詳しく描写したことも新しかった。そうした部分をいわゆる白日の下にさらしたのですね。その組織の軋轢に中で苦しむ人間ドラマという点(この部分を請け負うのが室井さんだ)も今ではすっかりお馴染みとなった。

このように「踊る」の13年にわたる足跡をたどると現代のTV&映画における刑事ドラマに対して、いかの「踊る」の影響が大きかったかがよく分かるのである。「あぶない刑事」のよいにカッコよく拳銃ぶっ放す刑事もいいが、「踊る」が醸し出すおかしなリアリティがこそが観客をひきつける時代になってしまったのですね。

実際まさか、いかりやさんが亡くなっては、もう映画化は無理だろうと思っていたが、今回のキャスティングを知って『そう来たか、その手があったか!』と思ってしまうのであった。

大体からして「交渉人 真下正義」「容疑者 室井慎次」がスピンオフと思ってしまいがちだが、実は番外編としての(これをスピンオフとは言わないかも)「湾岸署婦警物語」(98年のオンエア)があり、そこで登場した、夏美というキャラクターが最初のスピンオフかもしれず、彼女の存在はファンの間には知られているが、まさかそのキャスティングでくるとは思わなかったのだ。

もれ聞こえてくる話では、今回の出来には監督は相当の自信をもっているらしい。いっそ口うるさい『こんなのは映画じゃない』といい続ける(それはTV局製作の映画に対する偏見の塊と思うときもある)映画評論家をも唸らせ、2010年度キネマ旬報ベストワンでも獲ってしまったら、さぞや痛快だろうなぁ!