ブラックハイマーよ、どこへ行く?

かつてアメリカ映画界は名だたる名プロデューサー達の手によって『夢の工場』という隆盛を誇っていた。ダリル・F・ザナック、デビッド・O・セルズニック、サミュエル・ゴールドウィン、ジャック・L・ワーナー、アーサー・フリード、アドルフ・ズーカー、などなど。映画会社そのものの社長兼務も含めざっと挙げただけでも、これだけ思い浮かびます。

その頃の監督には最終編集権はなく、ラストシーンを決めるも上映時間の調整もすべてそうしたプロデューサー権限であった。では現代のアメリカ映画界の中ですぐ名前があがるプロデューサーはと言えば監督兼務でもあるスピルバーグと純粋プロデューサーのジェリー・ブラックハイマーだろう。

ファイナルカット権を保有したく、スタンリー・クレイマーのように製作、監督を貫き通した人も現れ、70年代以降監督もするがプロデューサーも兼ねる映画人が増え人財育成にも一役買うようになる。

ロジャー・コーマンを中心に考えると分かるやすい。コーマンに育てられたコッポラが、監督として成功するとプロデューサーとしてルーカスを援助してハリウッドを大きくしていった。スピルバーグは長年それを続け、カスダン、レビンソンなどを成長させていって、今でも(この持続は誰にもかなわない)2足のわらじは変わらない。

ブラックハイマーは80年代にドン・シンプソンとコンビの共同製作だったがシンプソンが死去したあとは自分のプロダクションを立ち上げディズニーをパートナーシップとして数々のエンタメ作品を世に送り出した。

ザ・ロック」「エネミー・オブ・アメリカ」「コン・エアー」そして「アルマゲドン」などである。

しかし、」ここのところのブラックハイマーはちょっと停滞気味だという印象はいなめない。手堅い「ナショナル・トレジャー」(でもこれも「インディ」ありきの企画だけどね)は別としてあとは「パイレーツ」シリーズのみなのである。

実は今年の夏までに「アニマルスパイGフォース」現在公開中の「プリンス・オブ・ペルシャ」そして(8月公開かな?)「魔法使いの弟子」と製作作品が3本あるが、なんか」新鮮味がない。それを「〜ペルシャ」に強く感じた。

「パイレーツ」の大ヒットが悪い影響を及ぼしているんじゃないかと思える特撮アクションのジェットコースタームービーでちゃんと終わりまで見られるが、やはり作りが荒い、脚本が練れていない、キャストの魅力は?などよくよく考えれば問題多数の出来なのである。

アクションばっかりに力を入れている(プリンス・オブ・ヤマカシ!だよね)ので魅力的になりそうな人物を殺している。今回は逃走途中に出会う盗賊のおっさんとその部下のナイフ使いの黒人、彼らとのエピソードの書き込みが足りない脚本がゆえに後半が生きない!また犯人をもっと隠せるあっという展開であるべきなのにその知恵がない、これらは監督マイク・ニューウェルの責任より、これぐらいでGOサインを出したブラックハイマーの責任だ。

「パイレーツ」が成功したがためにコスプレにこだわりすぎいませんか?「タイタンズを忘れない」のような『えっ?』と思わす作品がなければやはり飽きられてしまうだろう。

そうすると「パイレーツ」の成功は、いかにジョニー・デップのお陰かということになってしまう。今回も若手に中ではご贔屓のジェイク・ギレンホールが主演で、頑張ってはいるがちょっと彼でなくてもよかったかな?という感じもする。それ以上にお姫様に魅力を感じないのが困った(対立する魔女的な悪役の女優を配していないのも欠点)。これは女優が駄目と言うよりキャスティングに注力していない証拠。

これら並べていくと、今後ブラックハイマーに期待するのは「パイレーツ4」だけと言うことになってしまう。かつてドン・シンプソンがいた時には「トップ・ガン」「ビバリーヒルズコップ」「クロムゾン・タイド」と実にバラエティに富んだ作品群を生み出していたのはドンがいたから?と思われてしまうぞ!

なんかマイケル・ベイがアクション映画撮って“ブッラクハイマーみたい”とこの前までは言われたのに、このままいくと逆に“マイケル・ベイ的だなぁ”などと言われそうだぞ!

ああ、ブラックハイマーどこへ行く??