前田敦子という女優

今や社会現象化となり、多くの人に知られる存在になったAKB48、デヴューの頃には秋葉原で知られていればいいだろう、程度でしかなく、渋谷タワーレコードでのイベントでも『なんで渋谷?あっちでやってればいいんじゃないの?』が正直な感想であった。

しかし、そんな名前と顔がオヤジには全く区別がつかない彼女たちの中にあって前田敦子だけは知っていた。しかしこんなに人気があるとは知らなかった。前回の総選挙で(今回は2位でしたね)1位になった時にも『えっ、TOPなの?なんで?みんな映画ファンなの?』と勘違いしてしまった。

なぜ、オヤジが区別がついたか?それは彼女には他の人たちにはない、女優としての素晴らしいデヴュー作があったからである。その作品は今は亡き市川準監督作品の「あしたの私のつくり方」だ。その前田にとっての最高の映画初出演は多くの映画ファンの記憶に残ったはずだ。

主演は成海璃子であるが、彼女の同級生役の日南子という役どころで、いじめまでいかないが同級生に無視されてしまうのが最も怖いと感じる繊細な少女たちの物語。劇中ふたりの携帯メールのやりとりとなる『ヒナとコトリの物語』が現代の少女たちのコミュニケーションツールとして描かれちゃんと時代を切り取って魅せた(2007年公開作品)。

璃子ちゃんは達者な若手と知っていたが、映画を見終わってみんな『あの日南子役の子って誰?』となって、こんな若手の有望株を見つけるとはさすが「つぐみ」を取った市川監督だと感心しましたよ。それが前田と知るにはそうは時間はかからなかった。なぜならいつもセンターにいてくれたから。

しかし歌が売れてしまったからか、「伝染歌」(すいません、見てません)とあと1本(これも未見)の映画出演でその後映画にはチャレンジしてくれていない。まあ、拘束時間が多い映画は今の彼女には無理か?しかし「龍馬伝」でも立派に出演しているのだからなんとか彼女で生きのイイ青春映画を撮れないもんかねぇ。

映画業界も彼女の才能をほっておいては駄目ですよ。ちゃんと映画が出来る女優のどれだけ確保しても充分ということは決してないのだから・・・