グラン・ブルー再見!

今や若き映画ファンにも『タイトルだけは聞いたことあります』という程度になってしまったリュック・ベッソンの「グラン・ブルー」がデジタルリストアされて、この夏に再公開となるそうで一足早く再見させてもらった。

相性のいい監督と、どこまでいっても相性の悪い監督っていうのがいるでしょ。自分に置き換えるとリュック・ベッソン以上なのがテイラー・ハックフォードピーター・ウェラーだったりする。

初公開時の「グレート・ブルー」も、相性の悪さ以上に『ふ〜ん、「サブウェイ」の監督ってこんなのも撮るんだ』という程度の感想だった。この不評だった「グレート〜」から「グラン〜」になって急に評価が変わったという感じで、じゃ、いったい「グレート〜」はなんだったんだ、となる。

もっと言えばアメリカ公開版はジャックが浮き上がってくるラストに変えられての評価しかない映画なのですよ。よってリュック・ベッソンアメリカでの認知は「レオン」まで待たねばならなかったね。

ところが、22年ぶりに「グラン・ブルー」を見てみて大変面白く感じたのですよ。やはり映画は年月がたつと見方が変わってくる不思議なメディアなのですねぇ。

要するに映画に主役は誰か、という部分の見方を変えるのですね。だってこの映画のビリングトップはロザンヌ・アークェットですよ。この映画製作時点での俳優としての知名度が上というだけではないはずだ。

ロザンヌ扮するNY在住の(彼女のアパートからツインタワーが見える!)女性が仕事で知り合ったジャックというダイバーに恋こがれて、女性ならではの家庭、子どもなどの現実的な欲望を満たそうとする、失恋に終わってしまいました。

実は「グラン・ブルー」はそうした海とイルカに魅入られ、陸では生きられない男に失恋(種はもらうが)するかわいそうな女の話だったのですね!それが今回見てはっきり解りました。

そうだよ!あの女好きのベッソンが女性映画を撮らないことあったか?「レオン」でナタリー・ポートマン発見してくれてホントに感謝ですよ。その「レオン」が若干女性映画っぽくはないかもしれないが、他はすべて女性が主人公じゃないか!

これを皆、エンゾとの友情と海の美しさに癒される美しい映画って見てしまうのだけど(まあ、それが大多数ですが)、そこが今までこの「グラン〜」が楽しめなかった理由があったことに今回の再見で気がつきました。

これぞ、悲恋映画の決定版なのですよ!