画面の力がすべてでしょ

ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」の公開が始まり、新宿ピカデリーを覗くと、3D上映でのスクリーンはほぼ売り切れ状況だが、2Dは若干余裕があった。そして新宿ミラノ座を確認すると2Dのみの上映のため、『座れます』である。

はたして「アリス〜」に3Dは本当に必要か?

確かに「アリス〜」を3Dで見れば、それなりに楽しめるだろうが、2Dのみの公開であっても評価は変わらんでしょう。それだけ「アリス〜」は他の3D絶対頼みの映画とは決定的に違い(別にあの映画のみを指して言ってるわけじゃなく)作品世界観を示す『画』の力が備わっていると言えるんじゃないでしょうか。

だから逆に「アリス〜」には今回3Dの力を借りることなく、撮影時のそのままの2Dで、100億の興行成績にチャレンジして欲しかったよなぁ。

荒戸源次郎監督の「人間失格」を見る。後半、主人公が東京を離れ青森(だっけかな?)に行く場面以降に、荒れる海の上を鴎が飛ぶ風景や、D51の機関車が雪の中を疾走するインサートショットが出てくる。あきらかにそれまで展開されてきた『画』のトーンがそこだけ違うのである。というか、今の映画の製作状況でこんな力のある風景ショットは撮らんでしょうとすぐにわかってしまう場面なのでる。

“なんだか木村大作キャメラマンの画のようだなぁ”とちょっと映画を見慣れていれば思ってしまうだろう、とぼ〜っと考えながら「人間失格」のエンドクレジットを眺めていたら、最後のほうに『協力 木村大作』と出てきた。

そこで思い当たったのが、「剣岳」DVD発売タイミングでCSの東映チャンネルで放送された、木村大作の対談番組での一言。『俺の膨大なストックの風景ショットの貸し出し、もう最近はタダで貸してあげてんのよ!』

腑に落ちたのです。やはりあの「人間失格」の中の力のある風景ショットは木村大作ストックからの貸し出しだ!でも、それに対して裏をとった訳ではないし、また悪いことではまったくないと思っています。

むしろ次々に登場してくる女優陣の見せ方は荒戸監督のもので逆にこの辺の描写は木村監督にはできないよでしょ、とこちらも納得。

要するに立体映像であろうと、なかろうとその場面がどれだけの画面の力を持っているかが勝負ではないかということで、3Dにばっかり頼っている今のハリウッドには失望なのですよ!