大人の映画を・・・

フィルムセンターの『映画の中の日本文学』の特集上映で川島雄三の「花影」を見る。原作大岡庄平としての特集上映なのだが、まずびっくりするのが池内淳子の美しさだ。映画黄金期は、こういう美しい女性しか映画女優になれなかったのだと改めて実感してしまいましたよ。

そして映画女優としての彼女を数多く見てきたわけではないので大それたことは言えないのであるが、これって代表作って言ってもいいんでしょ。それだけ魅力満載ですよ!

1961年の映画でまだ銀座のバーでホステスといい始めたばかりの頃、むしろ女給さんという名残がある時代の話である。

その主人公が様々な男(池部良佐野周二高島忠夫有島一郎)との出会いと別れのその遍歴を淡々と描き彼女が自殺するまでを描く。なんかフランス映画の「鬼火」あたり思わせ、いかにも映画というより、文学って感じです。

そうした映画が普通に封切られていた時代、映画は大人のための娯楽であった。それが本当によくわかる作品で、昨今こんな映画はまず作られんでしょうね。しかし場内はかなりの埋まり具合(客層は高いですよ、そりゃ)、それを見てるともっと今の映画で『大人の映画』を作ってほしいよなぁ、と愚痴ってしまう自分がいるのです。

2009年の公開作では「ヴィヨンの妻」がそれに値する映画で評価はされるが、興行成績は望めないのが現状ですよね。もう作品評価と興行は別と考えねばならんのでしょうか。