これもひとつの映画原体験

40歳以上の邦画好き男子なら、必ず1回は日活ロマンポルノを通過してるでしょ。71年の第1作は間に合わなかったけど高校生となった73年以降はかなり今はなき名画座通いで見たものです。

銀座並木座、池袋文芸地下という名門どころから、新宿昭和館地下(でいいんだっけ?)新宿西口パレス(小田急ハルクの裏にありましたな)大塚の鈴本キネマなどをめぐり「白い指の戯れ」「赤い髪の女」「壇ノ浦夜枕合戦記」「天使のはらわた赤い教室」などなど、大いに堪能したものです。

でも見逃している作品のほうが多数あるのは仕方なく、ここでなんとか見ていなかったロマンポルノを見ようとシネマヴェーラへと向かっているのです。

大変恥ずかしながら見ていなかった田中登監督の傑作「色情めす市場」を見て『あ〜、ここにポン・ジュノの「母なる証明」のルーツがあるのねぇ』と今更ながらの確認となってしまった。

また「生贄夫人」がすべてだと思っていた小沼勝監督の「見せたがる女」と「女囚 檻」などをみて新たな魅力を発見したりしている。特に「檻」はいわゆる女囚もの。ホラー映画のカテゴリー内にゾンビという独立したジャンルがあるように、ポルノというカテゴリーに女囚という独立ジャンルもあり、それが一般映画となると「さそり」になったりする。

浅見美那、渡辺良子、松川ナミという後期のスター女優たちの競演であるが、その中の脇を固める一人が室井滋でホントいい味出してますね。この脇で光るスタンスがこの頃から今迄変わっていないのがすっげぇ女優さんですよね。主人公の浅見が女看守に虐められ、また神父さんに犯されようが反抗を貫く姿はポール・ニューマンの「暴力脱獄」女性版といったら言いすぎでしょうか。

そして間もなく98才の誕生日を迎えられる新藤兼人監督が脚本を書いた藤田敏八監督の「危険な関係」はちゃんと骨格のあるドラマで、それこそグレン・クロースやジョン・マルコヴィッチのハリウッド版よりずっと面白い。撮影安藤庄平、助監督根岸吉太郎と豪華スタッフ。そして主演はもっとも妖艶な時代の宇都宮雅代で見ごたえ十分であった。

なんか、ヴェーラが前にやった、東宝青春映画特集や70年代青春映画特集よりお客さんが来ている(女性もいらっしゃいますね)のがいささか複雑な心境だなぁ。