予告編には気をつけろ!

誘拐ラプソディー」を予告編で見たとき、『お〜、列車から身代金を投げるか!』それって黒澤の「天国と地獄」じゃん!と勝手に期待を膨らませてしまった。

誘拐と名前がつけば、それなりにサスペンスがあると勝手に思い込んでしまったが、実はこれオフビートな人情喜劇だったのですね。

「天国と地獄」では富豪の子供を誘拐したと思いきや、実は運転手の子供であって、その場合に誘拐での身代金要求が成立するのか、をならってここでは、運転手ではなくやくざの親分の息子の設定。

そこに警察が絡めば、誘拐犯はどちらからも追われるという、アメリカ映画でマフィアと警察両方に追われるというなんかあったような記憶がするパターン。

でも結局お話は手に負えない子供とダメ中年男子のおかしなロードムービーとなり、サスペンスとは無縁となる。それはやくざの親分さんを演じる哀川翔の誘拐直後の電話の会話のヘンテコリンで分かる。

この辺のところで、こうしたキャラ設定についていけなければあとは全然面白くないでしょう。ひたすら豪華な顔が並ぶゲストの俳優のお芝居を楽しむだけとなってしまう。

ところが、変なキャラばっかりだと思って見ていると榊監督自ら演じる、やくざの幹部が身代金を横取りして『あんたは子供が出来て終わってしまってるよ、引退しろ!』とたて突く場面などはリアルに迫ってくるからバランスが悪くなるのですね。

そう、映画本体がリアルを求めていないのに、一部がリアルに迫るとこうなるという見本です。いや〜、難しい!

とは言えこの映画が、ある俳優が出演していたがために多くの部分を取り直したと聞き、そうした困難を乗り越え無事こうして公開されたことはうれしいの一言。

やっぱり映画は撮ってなんぼではなく、お客様に見てもらってなんぼですからね。