「ファミリー・ツリー」を初日に見てしまった!

普段は、映画が公開されてもすぐに見に行くことはぜす、昔で言ったら“そろそろロードショーが終わる頃だ”と、例えば情報誌(これが無くなって困っているのだが)に『〇〇日まで上映』と出てから見に行くことが多かった。しかしシネコンの時代となり、良い映画であろうと客が来なければ、すぐに上映回数が減ったり、打ち切ったりされるので(昔は最低でも4週は上映してくれた)、比較的時間が合えばすぐに見るようになった。

とは言え、なかなか初日には駆けつけないのであるが、なんと時間が合ってしまったこともあったが、「ファミリー・ツリー」は初日に見てしまった。公開初日に見るなんて何年ぶりかな?まぁ、身内がフラを踊ったりしているので(決して「フラガール」の影響ではないと言っておきたい)、ハワイに対しての興味があったことあり、観光映画じゃないハワイが舞台の映画って、どんなのだ?の意識が強かった。

この映画を(見ていない状態で)有名にしてしまったのは、本命と言われた今年のアカデミー賞で、ジョージ・クルーニーが主演男優賞を取れなかったことでだった。はたして「アーティスト」のジャン・デュジャルダンの方が、ジョージの演技より上手いのか?を、まず確認したくもあった。実はアレクサンダー・ペインの映画はそれほど好きなタイプではない。「アバウト・シュミット」も「サイドウェイ」も冴えない中年男の悲哀のようなものを描き、それほどドラマチックな展開は見せないので、いわゆるメリハリが効いた場面展開のある映画を作る監督ではないからだった。

サイドウェイ」から7年ぶりの新作は、ごめんない!傑作でした!これは大変優れた映画です。またフォックス・サーチライト社作品にやられちゃいました!

その優れた映画の理由が、実は分かりやすいタイプの映画でもある。まずは優れた脚色ですね。原作の「The Descendants」というハワイ在住のカウイ・ハート・ヘミングス小説(翻訳は出ているのだろうか?すぐにでも読みたい!)の映画化であるが、原作を読めていなくても、巧みに映画に移し替えていることが分かる。最初の頃のモノローグから、妻の事故、二人の娘との関係が本当にリズムよく語られている。もちろん監督自身が脚本も手がけているから、その映像化は完璧(画面のリズムは編集の見事さ!)だ。

そこに美しいハワイの風景(キャメラが素晴らしい!)と、耳触りの良いハワイアンが合わさってくるので、本当に見ていて幸せになってくる。哀しい話であるにもかかわらず、である。そこがこの映画の魅力なのだ。事故に遭った妻の最期を看取ることと、その浮気を探っていきながら、娘との関係を修復していこうとする父親の物語、と文字で語れば『地味な映画』で終わってしまうタイプだ。しかし地味でありながら、見事にユーモアを盛り込める技量も示しているのだ!だから映画は見なきゃ何にも言えないのだ。

主人公マットは大地主という設定だ。その土地を売ろうとするサイドストーリーもあるが、最後に彼は自分が守るべきもの(残された二人の娘は当然だが)は何かを理解して、その土地を売るのをやめる。そこに、原題「The Descendants」が直訳すると『子孫』である、この映画の舞台がハワイである意味が見えて来るという部分が、もうひとつの面白さだ。

そして、最後に演技陣だ。ここにダニー・オーシャン=ジョージ・クルーニーはいない。いるのはマット・キングという悩み多きハワイ在住の弁護士で、二人の娘を持つ父親だ。それだけジョージは役を自分のものしている。そのコミカルな走り方や、浮気相手の家を探る場面での、悲しくも可笑しい姿は今まで見たこともないジョージだった!脇の男優はボー・ブリッジスロバート・フォスターで文句なし!大収穫はマットの娘アレクサンドラ役のシャイリーン・ウッドリーという若手女優だ。一番イイ時のリンジー・ローハンリリー・ソビエスキーを足した、雰囲気のあるTV側の女優さんだが、今後の映画出演に大いに期待が持てるぞ!

脚色賞のオスカー受賞は当然だが、誰が見てもジョージの主演男優賞もでしょ!!腹たつなぁ!