酒井和歌子 賛!!

中学3年で「ゴッドファーザー」などのアメリカ映画の洗礼を受け、洋画へ傾倒する前の小学校6年生から約3年半は、ひたすら邦画ばかり見ていた。邦画というより東宝映画といったほうがあっているかもしれない。

その東宝映画へのめり込んだ最大の理由は、一人の女優の存在を知ってしまったからだ。その名は酒井和歌子。私の永遠のマドンナである。最初に知ったのはCMからだったろうか。武田薬品の風薬『ベンザ』のCM、あの『風邪、いやぁ〜ね』というやつですね(知っている人はファン以外は50代ですな)。

こんな可愛らしい娘は誰なんだ!と小学校6年のガキは驚きました。そしてその女優が東宝映画ですでに主役をはっている人だと知るのに、そう時間はかからなかった。

リアルタイムで最初に和歌子さんの出演作を見たのは、多分「ブラボー!若大将」だろう。70年1月公開なので、4月から中学にあがる暇なガキはもう熱くなるしかありませんね。その思いは募り、これも多分、翌年の正月に年賀状を和歌子さんに宛てて出したのです。今では考えられないでしょうが、『近代映画』などのグラビア映画本などには、お住まいのアドレスがそのまま掲載されていたのですね。

驚いたのはその後、正月も終わり3学期の学校から帰ってきて、ふと家のポストを覗いたら、なんと年賀状の返事が届いていたのです!!心臓が口から飛び出しそうになったとは、この時の事をいうのでしょう。幸い親に見られず、恥ずかしい思いはせずに済みましたが、なんだか罪の意識さえ感じるほどの嬉しさでした。

そもそもなんで今、和歌子さんのことを語ってしまうかといえば、VAPからブルーレイディスクが出ている「飛び出せ!青春」を楽しんでいるからなのです。BDの最大の特徴である大容量を生かし、単なるビデオマスターだが、1枚のディスクで話数を多く収録しているTVドラマシリーズだ。

もちろん72年の2月からの1年間放送されたリアルタイムでも楽しんだ世代なので、最初は懐かしさだけだったのだが、良く見ると、実は数ある青春ドラマのなかで、これが最もいまの「ROOKIES」の原型であることが分かったのである。まあ、その部分は和歌子さんから離れて語られなければならないので別の機会としよう。

この中で和歌子さんは堅物の教師を演じている。この時点で(1949年生まれなので)22歳とは思えぬ落ち着きぶりである。3話目の奔放な妹に振り回される(この回の主役)演技では、相変わらずの可愛いけど暗い、そして美しい!

和歌子さんの役の上での特色は、子役から活躍した人なので、高校生役で初期の青春シリーズに出て、後期の青春シリーズでは先生役と変換したこと。これは同じ東宝の青春スター、内藤洋子には出来ないこと。この内藤洋子との対比は必ずついて回るが、どっちが好きか、というより決して二人は同じ役を取り合うことはしないで済んだと言っていいほど、特色が違うのである。

一番分かりやすい例で、共に大きな役ではないが同じ時代劇ということで比較しやすい「赤ひげ」と「いのちぼうにふろう」の2作品をあげよう。片や、若き青年医師、安本の婚約者の妹役の華やかな武家の娘、片や、不幸を背負いながら賢明に生きようとする町娘、ゆえにやさぐれ者たちの『この娘が助かるなら死んでもいいさ』(まあ、それ以前にいろいろあるが)と思わせる健気さ、という違いなのだ(分かる人だけ分かる!)

一年に2回ぐらいは「めぐりあい」を見直す、というぐらいに和歌子さんの出演作ではBESTだが、映画の出来も含め彼女のBEST5を無理やり選ぶとすれば、
①「めぐりあい」
②「兄貴の恋人」
③「ニュージーランドの若大将」
④「街に泉があった」
⑤「恋にめざめる頃」
明日になったら、こんなもの気分で変わるが今日はこんな感じの5本だ。ここに「俺たちの荒野」が入っていないのは、どうしてもあれは別格といつも思ってしまうからなのである。

「飛び出せ!青春」を見ていて、和歌子さんのもう1本のTVドラマが見たくなった(実はCSの1度ファミリー劇場でやったが)。それは70年8月から放映していた「蒼いけものたち」。これは金田一が出てこない「犬神家の一族」で、中学1年のガキにはかなり怖かった。しかしヒッチコックよろしく美女が怖い目にあわされるという点では和歌子さんは映画「悪魔が呼んでいる」もあり、ここに美女の条件をクリアしている事実があったということですね。